はんだペーストとはんだ線のどちらを選ぶかは、電子機器製造における基本的な判断の一つです。SMT実装が主流となった現在でも、手はんだ作業やリワークではんだ線が必要とされる場面は多くあります。本記事では両者の違いを詳しく比較し、適切な選び方を解説します。
はんだペーストとは
はんだペーストは、微細なはんだ粉末とフラックスを混合したペースト状の材料です。SMT実装では、メタルマスク(ステンシル)を介して基板のパッド上に印刷され、部品実装後にリフロー炉で加熱して一括はんだ付けを行います。

はんだペーストの合金組成
はんだペーストにはいくつかの合金ファミリーがあります。錫鉛(Sn63/Pb37)は融点183°Cで最も作業性に優れますが、RoHS規制により鉛フリーへの移行が進んでいます。鉛フリーの標準はSAC305(Sn96.5/Ag3.0/Cu0.5)で融点約217°Cです。低温用途にはSn42/Bi58(融点138°C)が使用され、高温用途にはSAC305やSn100Cがあります。
はんだ線とは
はんだ線は中空構造のワイヤ状はんだで、内部にフラックスが充填されています。主に手はんだ作業、リワーク、修理用途で使用されます。
線径は0.3mmから1.0mm以上まであり、ファイン電子作業用の0.3?0.5mm、汎用の0.5?0.8mm、スルーホール実装用の0.8?1.0mmが一般的です。はんだペーストとは異なり、はんだ線は特別な保存条件を必要とせず、常温で長期保存が可能です。

はんだペーストとはんだ線の比較
項目 | はんだペースト | はんだ線 |
形態 | ペースト状(クリーム) | ワイヤ状(中空、フラックス内蔵) |
主な用途 | SMT実装、リフローはんだ付け | 手はんだ、リワーク、修理 |
塗布方法 | メタルマスク印刷、ディスペンサ | はんだごてで溶かしながら供給 |
加熱方法 | リフロー炉(全体加熱) | はんだごて(局所加熱) |
保存条件 | 冷蔵保存(2?10°C)必要 | 常温保存可能 |
代表合金 | SAC305(鉛フリー)、Sn63/Pb37 | SAC305、Sn63/Pb37、Sn-Cu |
SMT実装とはんだペースト
SMT実装でははんだペーストが主要な接合材料です。メタルマスク印刷ではんだペーストをパッド上に塗布し、マウンタで部品を実装した後、リフロー炉で加熱して一括はんだ付けを行います。
大量生産?自動化
大量生産では、はんだペーストの印刷からリフローまでの一貫したプロセスが確立されています。自動光学検査(AOI)により印刷品質をリアルタイムで監視し、不良を早期に検出できます。はんだペーストを使用したSMT実装は、1時間あたり数万個の部品を実装可能で、最も効率的な量産方法です。
ファインピッチ?高密度設計
0.4mmピッチ以下のQFNや0.3mmのマイクロBGAなど、微細ピッチ部品の実装にははんだペーストが不可欠です。Type4(粒径25?38μm)やType5(粒径15?25μm)の微細粉末ペーストを使用することで、正確な量のペーストを塗布できます。
手はんだ?リワークとはんだ線
スルーホール実装
スルーホール部品(DIP IC、コネクタ、端子台など)の実装には、はんだ線が最も適しています。ウェーブはんだ付けが大量生産に使用される一方、試作や小ロット生産では手はんだが一般的です。はんだ線の線径は0.8?1.0mmが適しています。
修理?リワーク
リワーク作業では、はんだ線が不可欠です。部品交換時には、はんだ吸取線ではんだを除去し、新しい部品をはんだ線で実装します。はんだごての温度設定(鉛フリーで350?370°C、鉛入りで320?340°C)が作業品質を左右します。
試作?少量生産
試作段階では、はんだペースト用のメタルマスク製作コストを避けるため、はんだ線を使用した手はんだが効率的な場合があります。はんだペーストと手はんだを併用することで、試作の柔軟性と品質を両立できます。
実用的な選択フレームワーク
以下の4つの質問で、適切な材料を判断できます。
· Q1. 実装する部品の種類は?表面実装部品 → はんだペースト、スルーホール部品 → はんだ線
· Q2. 生産数量は?10?20枚以上の同一設計 → はんだペースト、少量 → はんだ線
· Q3. 設備は?リフロー炉とステンシル印刷機がある → はんだペースト、はんだごてのみ → はんだ線
· Q4. 品質基準は?航空宇宙?医療機器級 → はんだペースト+SMTが推奨
保存?取り扱い
はんだペーストは冷蔵保存(2?10°C)が必要で、標準的な保存期間は3?6ヶ月です。使用前には室温に戻してから攪拌します。一度開封したペーストは速やかに使用し、未使用分は密閉して冷蔵保存します。一方、はんだ線は常温で長期保存が可能で、特別な保存条件は必要ありません。

同一基板ではんだペーストとはんだ線を併用できますか?
はい、併用可能です。実際、多くの基板ではSMT部品ははんだペーストとリフローで実装し、スルーホール部品や大型部品は手はんだではんだ線を使用するハイブリッド方式が採用されています。また、SMT実装後にはんだ線で補修(タッチアップ)を行うことも一般的です。
よくある質問(FAQ)
Q1. はんだペーストとはんだ線は交換できますか?
基本的に交換できません。SMT実装でははんだペーストが必要で、はんだ線で代用することはできません。逆に、手はんだ作業でははんだ線を使用します。
Q2. はんだペーストの保存期間は?
はんだペーストは冷蔵保存(2?10°C)で通常3?6ヶ月です。常温での保存期間ははるかに短く、使用前には室温に戻してから攪拌する必要があります。はんだ線は常温で長期保存が可能です。
Q3. 鉛フリーはんだと鉛入りの違いは?
鉛フリー(SAC305)の融点は約217°Cで、鉛入り(Sn63/Pb37)の183°Cより約34°C高いです。リフロープロファイルのピーク温度も高く設定する必要があり、はんだごての温度設定も異なります。RoHS対応が要求される製品では鉛フリーが必須です。
Q4. はんだペーストと手はんだを併用できますか?
はい、多くの基板で併用されています。SMT部品ははんだペースト+リフローで、スルーホール部品は手はんだではんだ線で実装するハイブリッド方式が一般的です。
Q5. はんだペースト印刷で起こりやすい不良は?
ブリッジ(隣接パッド間の短絡)、はんだ不足、はんだボール、位置ずれなどがあります。メタルマスクの開口精度、印刷パラメータ(速度、圧力、クリアランス)、ペースト粘度の管理で防止できます。
まとめ
はんだペーストとはんだ線は、それぞれ異なる用途に最適化された材料であり、どちらか一方が常に優れているわけではありません。SMT量産でははんだペーストとリフローが標準ですが、試作や修理でははんだ線が不可欠です。多くのプロフェッショナルエンジニアは両方を使いこなし、基板の要件に応じて適切に使い分けています。PCBgogoではSMT実装から手はんだまで幅広い実装サービスに対応しています。